「ネトストされてるかも」「あの人ちょっとネトストっぽい」——SNSが日常に溶け込んだ今、こうした会話は珍しくない。ただ、ネトストという言葉を軽いノリで使う一方で、どこからが「まずい行為」で、どこからが法律の対象になるのかを正確に説明できる人は多くない。この記事では、ネトストの意味と由来に加えて、警視庁の統計データで見る実際の傾向、加害者側の心理、そして「これはネトストにあたるのか」を具体的なシーン別に判定するチェックリストまでまとめる。

「ネトスト」の意味とは?由来と一般的な使われ方

「ネトスト」は「ネットストーカー」を短くした言葉で、SNSやメール、ブログなどのインターネット上の手段を使って特定の人物の動向を執拗に追い続ける行為、またはそれを行う人を指す。「ネットストーキング」という動詞的な使い方をされることもある。ネットとストーカーという2つの単語を組み合わせて作られた略語で、辞書に古くから載っている言葉ではなく、SNSの普及にあわせてネット用語として定着したスラングに分類される。

具体的には、SNSの投稿を毎日チェックする、過去の投稿を数年分さかのぼって読み込む、いいねやコメントの相手を監視する、投稿の背景写真から自宅や勤務先を特定する、といった行為がネトストの典型例とされる。単に「知り合いのSNSをたまに見る」程度であれば一般的な範囲だが、相手が嫌がっているのを知りながら継続する、生活圏を特定しようとする、といった要素が加わると問題行為としての性質が強くなる。

例文

「元カレのインスタを毎日チェックしてしまう自分は、もはやネトストに近いのかもしれない。」

「知らないアカウントから頻繁に閲覧・反応が来て、正直ネトストされている気がして怖い。」

これはネトスト?3つの具体的シーンで判定する

「ネトストかどうか」は行為の内容だけでなく、相手との関係性や継続性によって判断が変わる。ここでは読者が実際に迷いやすい3つのシチュエーションを個別に見ていく。

ケース1:元恋人のSNSを頻繁にチェックする場合。過去に交際関係があった相手のSNSを閲覧すること自体は違法ではない。ただし、相手をブロックされた後に別アカウントを作って閲覧を続ける、投稿内容から現在の交際相手を特定しようとするなど、相手の意思に反して情報を追い続ける行為は、後述するストーカー規制法上の「つきまとい等」に該当する余地が生まれる。

ケース2:片思いの相手のSNSを追いかける場合。交際関係がないぶん「相手に会ったこともないのに生活パターンを把握している」状態になりやすく、投稿の位置情報や背景から自宅・職場を特定する行為は、相手が自分の存在を知らない場合でも規制対象になり得る。関係性がないことは免罪符にならない。

ケース3:職場の同僚や取引先のSNSを確認する場合。採用担当者が応募者のSNSを確認するような業務目的の閲覧は一般的に問題にならないが、私生活領域まで継続的に監視し、業務外で執拗に接触を試みる場合は、関係性が「職場」であっても対象から外れるわけではない。

3つのケースに共通するのは「相手の意思を無視した継続性」があるかどうかという点だ。1回きりの閲覧や、公開された投稿を見る行為そのものは対象にならないが、相手が拒否の意思を示した後も繰り返す、生活圏の特定に踏み込む、という要素が加わった時点で法的リスクが生じ始める。

ネトストは犯罪になるのか?ストーカー規制法との関係

警視庁の解説によると、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は「つきまとい等」として10種類の行為類型を定めている。代表的なものは次の通りだ。

行為類型内容
つきまとい・待ち伏せ等尾行、自宅・勤務先付近での見張り
監視の告知「見張っている」と相手に伝える行為
面会・交際の要求拒否されているのに復縁や交際を迫る
無言電話・連続した電話やメール等拒否後も繰り返す電話・メール・SNSメッセージ
名誉を害する事項の告知中傷的な内容をメールやSNSで送る
GPS機器等による位置情報の取得同意のない位置情報の追跡

ここで重要なのは、SNSのメッセージや連続した投稿への執拗な反応も「電子メール等」に含まれる形で規制対象になっている点だ。警視庁の解説では、SNSやメール等は「拒まれたにもかかわらず連続して」行われることが要件とされており、1度きりのメッセージや、相手が拒否の意思を示す前の行為は、直ちに規制対象になるわけではない。逆にいえば、ネット上だけで完結する行為であっても、繰り返しの拒否を無視して続ければ「ストーカー行為」として立件され得るということだ。

罰則面では、ストーカー行為そのものは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、警察の禁止命令に違反した場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と定められている(警視庁)。「ネットの中だけの話だから」という認識で行われる行為でも、現実の刑事罰につながる可能性がある制度だと理解しておく必要がある。

警視庁データで見るストーカー相談の実態

ネトストを含むストーカー行為が、実際にどの程度の規模で相談されているかを警視庁の公開統計から見てみる。東京都内におけるストーカー行為等の相談件数は、令和3年の1,102件から令和7年には1,751件へと5年間で約1.6倍に増加している。年ごとの内訳は次の通りだ。

相談件数(東京都内)
令和3年1,102件
令和4年1,207件
令和5年1,444件
令和6年1,455件
令和7年1,751件

さらに行為態様別の内訳(令和7年、警視庁)を件数の多い順に並べると、「つきまとい等」が860件(34.5%)で最も多く、次いで「面会・交際等の要求」が639件(25.6%)、「無言・連続電話等」が405件(16.2%)、「粗野乱暴な言動」が356件(14.3%)、「名誉の侵害」が120件(4.8%)と続く。無言電話やメール・SNSメッセージの連続送信を含む項目が全体の2割近くを占めており、対面での待ち伏せに次いで、ネット・通信手段を使った行為が高い割合を占めていることがわかる。この数字だけをもって「ネトストが増えている」と断定はできないが、通信手段を使ったつきまといが統計上も無視できない規模で扱われている、という事実は読み取れる。

なぜネトストをしてしまうのか?心理の3パターン

ネトストに至る心理は一様ではないが、相談事例や関連解説で挙げられる傾向を整理すると、おおむね次の3パターンに分けられる。

1. 嫉妬・比較からくる監視。元交際相手の新しい交友関係や生活の変化が気になり、「自分より幸せそうにしていないか」を確認する目的で投稿を追い続けるケース。監視を続けるほど不安が解消されるどころか強まり、閲覧頻度が上がっていくという悪循環に陥りやすい。

2. 執着・依存による情報収集。片思いの相手について「知れば知るほど距離が縮まる」という誤った感覚から、投稿を隅々まで追う行為がエスカレートするケース。相手との実際の関係の深さと、収集した情報量が比例していないため、行為者本人が「これは普通の関心の範囲だ」と誤認しやすい。

3. 自己正当化を伴う一方的な感情。「自分はこれだけ相手を思っているのに理解されない」という被害者的な受け止め方をしながら行為を続けるケース。この段階になると、相手の意思よりも自分の感情を優先する状態に入っており、行為者が自覚的に止めることが難しくなりやすい。ここで見られる感情は、相手との「信頼」ではなく一方的な「執着」であるケースが多く、両者の違いを理解しておくと自分の状態を客観視しやすくなる。

いずれのパターンにも共通するのは、相手との現実の関係性の深さと、行為者が抱く感情・執着の強さが釣り合っていない点だ。この不釣り合いに気づくこと自体が、行為をエスカレートさせないための最初のブレーキになる。

被害を受けた・してしまったときの対処法

被害を受けている側は、まずSNSアカウントを非公開設定にし、相手からのメッセージやコメントはブロックする。ブロック後に別アカウントで接触を試みてきた場合は、その履歴自体が「拒否されたにもかかわらず継続した」ことを示す証拠になるため、スクリーンショットで保存しておく。実害の懸念が具体的になった段階では、各都道府県警察の窓口や警察相談専用電話「#9110」に相談する方法がある。SNS運営会社への通報機能も、アカウントの利用制限という形で行為を止める手段のひとつだ。

自分の行為がネトストにあたるかもしれないと感じた側は、まず対象のアカウントをミュートまたはフォロー解除し、閲覧の習慣そのものを断ち切ることが出発点になる。前章で見た通り、行為がエスカレートする背景には「情報量と関係性の不釣り合い」があるため、相手との実際の関係を客観的に振り返ることが、行動を見直すきっかけになる。

まとめ

「ネトスト」はネットストーカーの略で、SNSやメールを使って特定の人物を執拗に追う行為を指す言葉だ。1回の閲覧やコメント自体が直ちに問題になるわけではないが、相手が拒否した後も継続する、生活圏の特定に踏み込むといった要素が加わると、ストーカー規制法上の「つきまとい等」として刑事罰の対象になり得る。警視庁の統計でも、通信手段を使ったつきまといは相談件数の中で無視できない割合を占めており、ネット上だけで完結する行為だからといって軽く扱ってよい問題ではない。元恋人・片思いの相手・職場関係者など、シーンによって受け止め方は変わるが、共通して見るべきなのは「相手の意思を無視した継続性」があるかどうかという一点だ。心当たりがある場合は、閲覧の習慣そのものを見直すところから始めてほしい。

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