ビジネスメールを読み返すと、一つの文章に「また」が3回も4回も出てくることがある。「また、下記の件についてですが」「また改めてご連絡いたします」「また、資料も添付しております」——同じ接続語が続くと、文章全体が単調で、言葉を選べていない印象を与えてしまう。「また」は追加・繰り返し・話題転換という3つの役割を1語で兼ねる便利な言葉だからこそ、使いすぎると読み手に文脈判断の負担をかけてしまう。この記事では、「また」が持つ役割を整理したうえで、追加・繰り返し・話題転換の3タイプ別に言い換え表現を30語紹介する。ビジネスメールでの例文集と、迷ったときの判断フローチャートもあわせて確認してほしい。

「また」の意味と3つの役割

デジタル大辞泉(Weblio辞書掲載)によると、「また」は副詞として5つ、接続詞として3つ、合わせて8種類の用法を持つ言葉だ。副詞では「もう一度繰り返す(再び)」「ほかと同じ状態(同じく)」「別の事柄である」「さらに別の事柄が加わる」「驚き・疑問を表す」という5つの意味があり、接続詞では「並列・列挙」「追加」「選択(または・あるいはの意)」の3つの働きを持つ。

辞書のこの8分類はやや細かく、実際に文章を書くときにそのまま使い分けるのは難しい。そこでこの記事では、ビジネス文章で「また」を使う場面を実務的な視点から3タイプに整理し直した。

  • ①追加・並列タイプ:前の話に新しい情報を付け足す(辞書でいう「追加」「並列」の用法)
  • ②再度・繰り返しタイプ:同じ行為・連絡をもう一度行う(辞書でいう「再び」の用法)
  • ③話題転換・書き出しタイプ:別の用件へ話を移すときの合図として使う(辞書には明記されないが、実務メールで多用される用法)

なお、「AまたはB」のように選択肢を示す「または」は「また」から派生した語だが、役割がまったく異なるため、この記事の言い換えリストには含めていない。選択を表したい場合は「あるいは」「もしくは」を使えば十分で、無理に「また」に寄せて考える必要はない。

「また」を使いすぎると起きること

「また」が読みにくい文章の原因になりやすいのは、1つの単語が3つの役割を兼ねているせいで、読み手が「これは追加情報なのか、繰り返しの連絡なのか、それとも話題が変わったのか」を毎回文脈から判断しなければならないためだ。特に長いビジネスメールで「また」が連続すると、次のような読みにくさにつながる。

  • 箇条書きの代わりに「また」でつないでしまい、情報の優先順位が伝わらない
  • 「また」の後に用件と関係の薄い話題が続き、メールの主旨がぼやける
  • お詫び・お願いのメールで「また」を多用すると、丁寧さより事務的な印象が先に立つ

逆にいえば、「これは追加情報を言おうとしているのか」「もう一度同じ連絡をしているのか」「話題を変えようとしているのか」を書き手自身が意識して言葉を選ぶだけで、文章の見通しは大きく改善する。次の章で、役割別に使える言い換え表現を紹介する。

役割別・言い換えフレーズ30選

「また」の3つの役割それぞれについて、フォーマル度の異なる言い換え表現を10語ずつ、合計30語を整理した。フォーマル度は、取引先・役員向けの文書でどこまで違和感なく使えるかを星の数(★の多いほうがフォーマル)で示している。

①追加・並列タイプの言い換え10選

言い換え語フォーマル度ニュアンス・使うシーン
さらに★★★☆☆最も汎用的。社内メールから取引先向け文書まで使える
加えて★★★★☆「さらに」よりやや硬い。報告書・提案書向き
そのうえ★★★☆☆前の内容にプラスの評価を重ねるニュアンス
しかも★★☆☆☆驚き・強調を伴う追加。使いすぎると誇張的に響く
併せて★★★★☆「同時に」の意味を含む。案内メールで頻出
そのほか★★★☆☆複数項目を列挙したあとの締めくくりに使いやすい
かつ★★★★☆2つの条件・事実を同時に満たすことを示す硬い表現
ならびに★★★★★公的文書・案内状で複数の対象を並列するときの定型
および★★★★★「ならびに」と近いが、より広く使われる法令・契約文書調の表現
付け加えますと★★★★☆口頭・会議での補足発言に使いやすい丁寧表現

②再度・繰り返しタイプの言い換え10選

言い換え語フォーマル度ニュアンス・使うシーン
改めて★★★★☆日を置いて再度連絡・訪問する場面の定番
重ねて★★★★☆同じ依頼・お礼を繰り返すときに使う
再度★★★☆☆シンプルに「もう一度」を示す実務的な表現
追って★★★★☆後日あらためて連絡する予定を伝えるときに使う
後日改めて★★★★☆「追って」より具体的に、日を改めることを示す
重ねてのお願いで恐縮ですが★★★★★依頼を繰り返す際のクッション表現つきフレーズ
再三ではございますが★★★★☆すでに何度か伝えている内容を再度伝えるときに使う
繰り返しになりますが★★★☆☆資料の要点や注意事項を再確認するときに使いやすい
再度のご連絡となりますが★★★★☆同じ用件で連絡が2回目以降であることを示す
度々のご連絡失礼いたします★★★★★短期間に何度も連絡する際のお詫びを兼ねた前置き

③話題転換・書き出しタイプの言い換え10選

言い換え語フォーマル度ニュアンス・使うシーン
なお★★★★☆補足事項・注意事項を書き添えるときの定番
一方★★★★☆対比・別の視点を示しながら話題を移すときに使う
別件ですが★★★☆☆今までの話とは無関係の用件に切り替えるとき
話は変わりますが★★☆☆☆口頭・カジュアルな文章での話題転換に使いやすい
続いて★★★☆☆複数の議題を順番に進める会議・議事録で使いやすい
次に★★★☆☆手順や説明を順序立てて進めるときに使う
ところで★★☆☆☆やや口語的。雑談から本題に戻すときにも使える
つきましては★★★★☆前の話を受けて次のお願い・依頼へつなげるときに使う
本題とは別になりますが★★★★☆用件の重要度が異なることを明示したいときに使う
ここからは別のご連絡になりますが★★★★☆1通のメールで複数の用件を扱うときの区切りに使う

ビジネスメールで使える言い換え例文集

同じ内容でも、「また」をどう言い換えるかで文章の印象は変わる。3つの典型的なシーンで比較してみよう。

シーン1:取引先への追加依頼メール(追加・並列タイプ)

△ 「また」を使った表現

「先ほどお送りした資料をご確認ください。また、来週の打ち合わせ日程についてもご検討いただけますと幸いです。」

○ ビジネスメール向け

「先ほどお送りした資料をご確認ください。併せて、来週の打ち合わせ日程についてもご検討いただけますと幸いです。」

◎ より丁寧な表現

「先ほどお送りした資料をご確認ください。加えて、来週の打ち合わせ日程につきましてもご検討いただけますと幸いに存じます。」

シーン2:進捗の再連絡メール(再度・繰り返しタイプ)

△ 「また」を使った表現

「先週ご案内した件につきまして、また念のためご連絡いたします。」

○ ビジネスメール向け

「先週ご案内した件につきまして、念のため改めてご連絡いたします。」

◎ より丁寧な表現

「先週ご案内した件につきまして、重ねてのご連絡で恐縮ですが、念のため再度お伝えいたします。」

シーン3:社内報告書での話題転換(話題転換・書き出しタイプ)

△ 「また」を使った表現

「A案件は予定通り進行しております。また、B案件については人員の調整が必要な状況です。」

○ ビジネス向け

「A案件は予定通り進行しております。一方、B案件については人員の調整が必要な状況です。」

◎ より丁寧な表現

「A案件は予定通り進行しております。なお、B案件につきましては人員の調整が必要な状況でございます。」

3つの例文を比べると、「追加」なら「併せて」「加えて」、「繰り返し」なら「改めて」「重ねて」、「話題転換」なら「一方」「なお」という具合に、役割ごとに定番の言い換え語がある。文の直前で「これは追加なのか、繰り返しなのか、話題転換なのか」を一瞬だけ意識するだけで、選ぶべき言葉は自然と絞り込める。

社内チャット・口頭での言い換え表現

取引先向けのメールと違い、社内チャットや口頭でのやり取りでは、堅すぎる言い換えはかえって不自然になる。カジュアルな場面では次のような表現が使いやすい。

  • それと:「資料送っておきました。それと、明日の会議の件ですが」のように、社内チャットで軽く話題を追加するときに使う
  • あと:「あと、経費精算の締め切りが今週末です」のように、口頭の連絡事項を付け足すときに使う
  • ちなみに:「ちなみに、前回のデータも参考になるかもしれません」のように、補足情報であることを明示したいときに使う
  • そういえば:話しているうちに思い出した別件を切り出すときに使う。話題転換タイプのカジュアル版

ただし、社内チャットであっても、役員や他部署の責任者が見る場では「それと」「あと」よりも「併せて」「なお」のほうが無難な場合がある。相手が誰かによって、カジュアル表現とフォーマル表現を切り替える意識を持つとよい。

迷ったときの「言い換え選びフローチャート」

どの言い換えを選べばよいか迷ったときは、次の3つの問いを順番に確認すると判断しやすい。

問い1:伝えたい内容は「追加」「繰り返し」「話題転換」のどれか?

  • 前の話に新しい情報を足すだけ → 追加・並列タイプ(さらに/併せて/加えて 等)
  • 同じ用件をもう一度伝える → 再度・繰り返しタイプ(改めて/重ねて/再度 等)
  • まったく別の用件に切り替える → 話題転換タイプ(なお/一方/別件ですが 等)

問い2:相手は誰か?

  • 取引先・役員・初対面の相手 → フォーマル度★★★★以上の表現を選ぶ
  • 社内の同僚・気心の知れた相手 → フォーマル度★★程度でも問題ないことが多い

問い3:書き言葉か、話し言葉・チャットか?

  • メール・報告書・議事録 → 「なお」「併せて」「改めて」など書き言葉の表現を選ぶ
  • 口頭・社内チャット → 「それと」「あと」「ちなみに」など話し言葉の表現でよい

まとめ:シーン別の早見表

・取引先への追加依頼メール → 「併せて」「加えて」

・同じ用件の再連絡メール → 「改めて」「重ねてのご連絡で恐縮ですが」

・報告書での話題転換 → 「一方」「なお」

・社内チャットでの軽い追加連絡 → 「それと」「あと」

・お詫び・お願いを繰り返す場面 → 「再三ではございますが」「度々のご連絡失礼いたします」

接続詞を変えるだけで完璧な文章になるわけではないが、「また」を無意識に連発している状態から抜け出すだけでも、文章の見通しはかなり良くなる。関連して、文頭の接続表現に悩みやすい人は「なので」の言い換え決定版もあわせて読むと、ビジネス文書全体の接続語の選び方がより整理しやすくなる。ビジネス文書で誤用しやすい言葉が気になる人は「当該」と「該当」の使い分けも参考にしてほしい。

まとめ

「また」は副詞として5つ、接続詞として3つの用法を持つ言葉で、この記事ではビジネス文章での使われ方を実務的に「追加・並列」「再度・繰り返し」「話題転換・書き出し」の3タイプに整理した。1つの単語が複数の役割を兼ねているために読み手が文脈判断を強いられる、という点が「また」の使いすぎが読みにくさにつながる理由だ。

言い換えのポイントを整理する。

  • 追加・並列:「併せて」「加えて」「そのうえ」など。前の話に新しい情報を足すときに使う
  • 再度・繰り返し:「改めて」「重ねて」「再度」など。同じ用件をもう一度伝えるときに使う
  • 話題転換・書き出し:「なお」「一方」「別件ですが」など。用件を切り替えるときに使う
  • 相手・場面(書き言葉か話し言葉か)の2つを意識すると、フォーマル度に応じた言葉が選びやすい

次に文章を書くときは、「また」と打つ前に一瞬だけ「これは追加か、繰り返しか、話題転換か」を意識してみるとよい。それだけで、単調になりがちなビジネスメールや報告書が、格段に読みやすく整理された印象に変わる。

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