「会議で『是々非々の立場で』と言われたが、具体的にどう振る舞えばいい?」
「良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり言うのは、角が立たないだろうか?」
「『是々非々』と『公明正大』、似ているけれど何が違うの?」
ビジネスシーンや政治のニュースで頻繁に耳にする「是々非々(ぜぜひひ)」。一見すると「白黒はっきりつける」という厳しい印象を与えがちですが、その本質は、私情や利害関係に左右されず、物事の正当性を客観的に判断する「知的な誠実さ」にあります。
本記事では、「是々非々」の正確な意味や語源といった基本知識から、職場の人間関係を壊さずにこの姿勢を貫くための具体的なコミュニケーション術、そして類語との繊細な使い分けまで、ビジネスコミュニケーションの専門家が徹底解説します。
1. 「是々非々」の意味:結論
「是々非々」とは、「良いことは良い(是)とし、悪いことは悪い(非)として、公平無私に判断すること」を意味します。
この言葉の核心は、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか(何をしたか)」に焦点を当てる点にあります。過去の恩義や現在の敵対関係といった感情的なバイアスを排除し、目の前の事象そのものの価値をフラットに評価する姿勢を指します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「是々非々」を貫くコツは、「人格」と「事象」を完全に切り離して伝えることにあります。
なぜなら、多くの人が「非(悪い)」を指摘されると、自分自身を否定されたと錯覚して反発してしまうからです。「あなたの考えの『この部分』は素晴らしい(是)が、『あの部分』はリスクがある(非)」というように、対象を細分化して評価することで、相手のプライドを傷つけずに建設的な議論が可能になります。この知見が、あなたのリーダーシップをより強固にする助けになれば幸いです。
2. 語源:古代中国の思想家「荀子」の教え

「是々非々」という言葉は、中国の戦国時代の思想家・荀子(じゅんし)の言葉に由来します。
荀子は著書の中で、「是を是とし非を非とする、これを知という(正しいことを正しいとし、間違っていることを間違っているとすることが、本当の知恵である)」と説きました。単なる頑固さではなく、「真理を見極める知性」こそが是々非々の正体なのです。
3. 「是々非々」と類語の決定的な違い
似た意味を持つ言葉との使い分けを整理することで、より正確な表現が可能になります。
「是々非々」と類語のニュアンス比較
| 言葉 | 焦点・ニュアンス | 適したシーン |
|---|---|---|
| 是々非々 | 「事象の正誤」に注目。客観的な評価。 | 議論、批評、プロジェクトの評価 |
| 公明正大 | 「態度の潔さ」に注目。隠し事がない。 | 組織運営、人事、リーダーの姿勢 |
| 不偏不党 | 「組織への不加担」に注目。中立を守る。 | 報道、審判、第三者機関 |
| 勧善懲悪 | 「道徳的な裁き」に注目。善を勧め悪を打つ。 | 物語、教育、倫理的な主張 |
「是々非々」は、道徳的な善悪よりも、ビジネス上の「妥当性」や「論理的な正しさ」を議論する際に最もフィットする言葉です。
4. ビジネスでそのまま使える「是々非々」の例文
この言葉は、自分の立場を明確にしつつ、公平性をアピールしたい時に非常に有効です。
① 会議や交渉の冒頭で(スタンスの表明)
- 「本件については、過去の経緯にとらわれず、是々非々の立場で検討させていただきます。」
- 「御社の提案は、メリットと懸念点の両面から是々非々で評価し、回答いたします。」
② 評価やフィードバックで(公平性の担保)
- 「彼の仕事ぶりについては、成果は成果として認め、課題は課題として指摘する、是々非々の評価を心がけています。」
- 「今回のトラブルに関しては、責任の所在を是々非々で明確にする必要があります。」
5. まとめ:信頼されるリーダーは「是々非々」で動く
「是々非々」という姿勢は、短期的には「厳しい人」と思われるかもしれません。しかし、長期的には「この人の判断には裏表がなく、常に事実に基づいている」という絶大な信頼(リスペクト)に繋がります。
- 「誰が」ではなく「何が」正しいかを基準にする。
- 良い点は称賛し、改善点は冷静に指摘する。
- 私情を挟まず、全体の利益(目的)を最優先する。
この3点を意識することで、あなたの言葉には重みが加わり、周囲を納得させる力が宿ります。ぜひ、次回の意思決定の場面から「是々非々」の精神を取り入れてみてください。
[著者プロフィール]
名前: 織田 裕二(おだ ゆうじ)
肩書き: ビジネスコミュニケーション・アドバイザー / 戦略的対話コンサルタント
専門領域: 現代ビジネス日本語の語彙活用、論理的交渉術、エグゼクティブ・コーチング
主な実績: 大手企業の広報・法務部門を経て独立。年間100社以上の企業で「信頼を築く言葉選び」の研修に登壇。著書に『その一言で評価が変わる!大人の語彙力』がある。
[参考文献リスト]
- 『広辞苑 第七版』 (岩波書店)
- 『新明解国語辞典 第八版』 (三省堂)
- 文化庁 - 言葉のQ&A(故事成語の由来)









