
「契約書や公文書で『本件に係る費用』という表現を見るが、どういう意味?」
「『関わる』や『係わる』と何が違うのか、使い分けに自信がない」
「もっと分かりやすい言葉に言い換えたいけれど、適切な表現は?」
ビジネス文書や公用文、法律用語として頻繁に登場する「係る(かかる)」。日常会話ではあまり使われないため、いざ文書を作成する際に「この使い方は正しいのか?」と迷う方も多いはずです。
本記事では、「係る」の正確な意味から、「関わる」「掛かる」との決定的な違い、そして今日からそのまま使えるビジネス例文と言い換え術まで、文書作成の専門家が徹底解説します。
1. 「係る」の意味:結論
「係る」とは、「ある事柄に関係する」「関わりを持つ」という意味を持ち、主に公用文や法律、契約書などの硬い文書で「〜に関する」「〜の」というニュアンスで使われる言葉です。
最大の特徴は、「直前の名詞が、直後の名詞を修飾する」という限定的な関係を示す点にあります。例えば「本件に係る費用」は、「本件に関係している費用」という意味になります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「係る」は、「A(対象)に係るB(内容)」というサンドイッチ構造で理解しましょう。
なぜなら、ビジネス文書における「係る」は、実質的に助詞の「の」や「に関する」をより厳格に、かつ硬く表現しただけのものだからです。ただし、公用文では「係わる(送り仮名あり)」ではなく「係る(送り仮名なし)」と書くのがルールです。この表記のルールを知っているだけで、あなたの作成する文書の信頼性は格段に向上します。この知見が、正確な文書作成の助けになれば幸いです。
2. 「係る」「関わる」「掛かる」の決定的な違い

読みが同じ、あるいは意味が似ている言葉との使い分けを整理します。
「係る」「関わる」「掛かる」の使い分けガイド
| 言葉 | 主な意味・ニュアンス | 適したシーン | 例文 |
|---|---|---|---|
| 係る | 関係がある(限定的・硬い) | 契約書、公用文、法律 | 「本件に係る諸経費」 |
| 関わる | 影響を及ぼす、携わる | 一般ビジネス、日常、重大事 | 「命に関わる問題」 |
| 係わる | 「関わる」の別表記 | 一般的ではない(「関わる」を推奨) | - |
| 掛かる | ぶら下がる、費用・時間が要る | 日常、物理的・時間的現象 | 「費用が掛かる」 |
「係る」は「関係性」を、「関わる」は「影響や関与」を、「掛かる」は「所要や物理的状態」を指すと覚えると、迷いがなくなります。
3. ビジネスでそのまま使える「係る」の例文
「係る」は、特定の対象を限定して説明する際に非常に重宝されます。
① 契約書や規約での使用
- 「本契約に係る紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。」
- 「本業務に係る再委託に関しては、甲の書面による事前の承諾を要するものとする。」
② 報告書や公的な依頼での使用
- 「次年度の予算編成に係るヒアリングを以下の通り実施いたします。」
- 「個人情報に係る取り扱いについては、プライバシーポリシーをご参照ください。」
4. 「係る」の言い換え表現:もっと分かりやすくするには?
「係る」は非常に硬い表現であるため、社内メールや一般的なプレゼン資料では、より平易な言葉に言い換えた方がスムーズに伝わります。
- 「〜に関する / 〜に関する」: 最も汎用性が高く、自然な言い換えです。
- (例)本件に係る費用 → 本件に関する費用
- 「〜の」: 最もシンプルですが、文脈によってはこれで十分通じます。
- (例)検査に係る実施要領 → 検査の実施要領
- 「〜についての」: 少し柔らかい印象を与えたい時に適しています。
- (例)改修に係るご相談 → 改修についてのご相談
5. まとめ:正確な言葉選びでプロの文書を
「係る」という言葉を正しく使いこなせるようになると、あなたの作成する文書に「法的・公的な厳格さ」が宿ります。
- 契約書や公用文では、送り仮名なしの「係る」を使う。
- 「Aに関係するB」という限定的な修飾として使う。
- 一般のビジネスメールでは「に関する」や「の」に言い換えて柔軟に対応する。
言葉の持つ「硬さ」と「役割」を理解し、状況に合わせて「係る」を使い分けることで、読み手にとって信頼感のある、質の高いコミュニケーションを実現してください。
[著者プロフィール]
名前: 織田 裕二(おだ ゆうじ)
肩書き: ビジネスコミュニケーション・アドバイザー / 文筆家
専門領域: 現代ビジネス日本語、公用文作成ルール、契約書・法務文書の校正
主な実績: 大手企業の法務部門および広報を経て独立。自治体や企業向けに「伝わる公用文・ビジネス文書」のセミナーを年間50回以上開催。
[参考文献リスト]
- 文化庁 - 公用文作成の考え方(建議)
- 『公用文表記の基礎知識』 (学陽書房)
- 『広辞苑 第七版』 (岩波書店)













