
「逮捕=前科」と思っている人は多いですが、実際には刑事事件の多くは「不起訴」という形で終了します。不起訴になれば裁判は開かれず、前科もつきません。
この記事では不起訴の定義・種類・前科がつかない理由・釈放までの流れをまとめます。
不起訴とは
不起訴処分(ふきそしょぶん)とは、検察官が「この事件は裁判にしない」と判断することです。
日本の刑事司法では、事件を裁判にかける(起訴する)権限は検察官だけが持っています(起訴独占主義)。検察官が諸般の事情を考慮して「裁判にする必要はない」と判断すれば、その時点で事件は終了します。
不起訴の3つのメリット
前科がつかない:裁判が開かれないため有罪判決を受けることがなく、前科として記録されません。
即座に釈放される:逮捕・勾留されている場合、不起訴処分が決定した瞬間に身柄が解放されます。
社会復帰への影響が小さい:前科がないため、就職・資格取得への影響を最小限に抑えられます。
不起訴の3種類
| 種類 | 意味 |
|---|---|
| 嫌疑なし | 犯人ではないことが証明された、または証拠が全くない場合 |
| 嫌疑不十分 | 犯罪の疑いはあるが、有罪立証に足りる証拠が揃わない場合 |
| 起訴猶予 | 犯罪は認定できるが、反省・被害の軽微さ・示談成立などを考慮して裁判にしない場合 |
実務上最も多いのが起訴猶予です。犯罪の事実はあっても、検察官の裁量によって「今回は裁判にしない」と判断される形です。
不起訴を目指すために重要なこと
起訴猶予による不起訴処分を目指す場合、最も重要なのが被害者との示談(じだん)の成立です。
検察官は起訴・不起訴を判断する際に「被害者の処罰感情」を重視します。被害者に謝罪・被害弁償を行い、「処罰を望まない」という合意(宥恕条項)を得ることができれば、不起訴処分の可能性が高まります。
弁護士が担う役割
逮捕されている場合、本人や家族が直接被害者に連絡を取ることは証拠隠滅・脅迫と疑われるリスクがあります。弁護士が第三者として交渉の場を設けることで、円滑な示談交渉が可能になります。
また弁護士は示談成立の事実や本人の更生環境を「意見書」としてまとめ、検察官に提出することで、不起訴処分を働きかけます。
逮捕から釈放までの流れ(不起訴の場合)
- 逮捕:警察が逮捕(最大48時間)
- 検察官へ送致:警察から検察官に事件が引き継がれる(24時間以内)
- 勾留:検察官が請求し、裁判官が認めると最大20日間の勾留
- 不起訴処分:検察官が不起訴を決定
- 即日釈放:処分決定後、その日のうちに身柄が解放される
弁護士がいない場合は勾留満期(最大23日間)まで拘束されることが多いですが、早期の示談成立などにより数日で釈放されるケースもあります。
よくある質問
Q. 不起訴になれば履歴書の賞罰欄に書く必要がありますか?
原則として書く必要はありません。「賞罰」の「罰」とは確定した前科を指します。不起訴処分は前科ではないため、記載しなくても経歴詐称にはなりません。
Q. 不起訴になれば警察の記録から完全に消えますか?
警察・検察の内部記録には「前歴」として残ります。ただし一般企業や第三者がこの記録を照会することはできません。
Q. 前科と前歴の違いは何ですか?
前科は裁判で有罪判決を受けた記録です。前歴は捜査・逮捕を受けた記録で、前科よりも法的な不利益は限定的です。不起訴の場合は前歴は残りますが前科にはなりません。
Q. 在宅捜査(逮捕なし)でも不起訴になりますか?
なります。在宅のまま捜査が進み、検察官が起訴・不起訴を判断します。起訴の場合は呼び出しを受けて裁判に臨むことになります。
まとめ
- 不起訴処分になれば裁判は開かれず、前科はつかない
- 不起訴には「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3種類がある
- 実務上最多の「起訴猶予」を目指すには被害者との示談成立が最重要
- 不起訴が決まれば即日釈放。弁護士による早期の対応が釈放時期を左右する
- 不起訴後は「前歴」は残るが前科とは異なり、社会生活への影響は限定的







