「会社に『つとめる』はどちらの漢字を使うのが正解?」
「司会を『つとめる』と書く際、変換で迷ってしまう」
「『努める』もあって、三つの使い分けがややこしい……」
日本語には同じ読みで意味が異なる「同訓異字」が多く存在しますが、その中でも「務める」と「勤める」はビジネスシーンで最も頻繁に、そして最も間違われやすい組み合わせの一つです。
本記事では、「務める」と「勤める」の決定的な違いから、迷わず使い分けるための「役割」と「所属」の考え方、そして今日から使える具体的な例文まで、言葉の専門家が徹底解説します。
1. 「務める」と「勤める」の違い:結論
「務める」は特定の「役割や任務」を果たすことを指し、「勤める」は会社などの「組織に所属して働く」ことを指します。
一言で言えば、「務める」は「役目」に注目した言葉であり、「勤める」は「勤務」に注目した言葉です。この違いを理解するだけで、ビジネスメールや文書作成での誤変換を劇的に減らすことができます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷った時は、その言葉の後に「先(さき)」を付けられるかで判断してください。
なぜなら、「勤める」は「勤め先(会社など)」という場所が存在しますが、「務める」は「務め先」とは言わないからです。「司会を務める」とは言いますが「司会先」とは言いませんよね。この「場所(所属)があるかどうか」という基準を持つだけで、9割のケースで正しく使い分けることが可能です。この知見が、あなたの正確な日本語運用の助けになれば幸いです。
2. 「役割」の務めると「所属」の勤める

それぞれの言葉が持つ本来の意味と、具体的なイメージを整理します。
「務める」:役割・任務を果たす
「務める」は、ある特定の立場や役目を引き受け、その仕事を全うすることを意味します。
- イメージ: 舞台の主役、会議の進行役、委員会の委員など。
- ポイント: 「〜として働く」「〜の役をやる」と言い換えられる場合に多く使われます。
「勤める」:組織に所属して働く
「勤める」は、官公庁や会社などの組織に雇用され、継続的に勤務することを意味します。
- イメージ: 会社員、公務員、銀行員など。
- ポイント: 「〜に勤務する」「〜に雇用される」と言い換えられる場合に多く使われます。
「務める」と「勤める」の使い分けガイド
| 項目 | 務める(役割) | 勤める(所属) |
|---|---|---|
| 核心的な意味 | 役目や任務を果たす | 組織に所属して働く |
| 対象となるもの | 司会、主役、議長、幹事 | 会社、役所、銀行、学校 |
| 言い換え表現 | 〜の役をやる、〜を担当する | 〜に勤務する、〜に勤める |
| 助詞の傾向 | 「〜を」務める | 「〜に」勤める |
3. そのまま使える!正しい例文集
日常やビジネスでよくあるシチュエーション別の例文です。
「務める」の正しい例文
- 「本日の会議では、私が進行役を務めさせていただきます。」
- 「彼は長年、その劇団で主役を務めてきた実力派だ。」
- 「新プロジェクトのリーダーを務めることになり、身が引き締まる思いです。」
「勤める」の正しい例文
- 「父は30年間、同じ銀行に勤めています。」
- 「大学を卒業後は、地元の市役所に勤める予定です。」
- 「以前は広告代理店に勤めておりました。」
4. 補足:「努める」との違いにも注意
「つとめる」にはもう一つ、「努める」という漢字があります。
- 努める: 努力する、精を出すという意味です。
- (例)「問題の早期解決に努めます。」
- (例)「サービスの向上に努めてまいります。」
「務める(役割)」や「勤める(所属)」が具体的な「仕事」を指すのに対し、「努める」は「心の持ちようや努力の姿勢」を指すと覚えると分かりやすいでしょう。
5. まとめ:正確な言葉選びで信頼を築く
「務める」と「勤める」の使い分けは、一見細かいことのように思えますが、正確に使い分けることで「教養のある、信頼できるビジネスパーソン」という印象を相手に与えることができます。
- 特定の「役目」を果たすなら「務める」。
- 特定の「場所」で働くなら「勤める」。
- 「努力」する姿勢を示すなら「努める」。
この3つのポイントを意識して、自信を持って言葉を選んでください。あなたの言葉が、より正確に、そして誠実に相手に届くことを願っています。
[著者プロフィール]
名前: 織田 裕二(おだ ゆうじ)
肩書き: ビジネスコミュニケーション・アドバイザー / 文筆家
専門領域: 現代ビジネス日本語、論理的文章術、エグゼクティブ・マナー
主な実績: 大手企業の広報・秘書を経て独立。ビジネス語彙に関するセミナーを年間50回以上開催。著書に『その一言で評価が変わる!大人の語彙力』がある。
[参考文献リスト]
- 文化庁 - 敬語の指針
- 『広辞苑 第七版』 (岩波書店)
- 『新明解国語辞典 第八版』 (三省堂)













